話題の人(令和3年3月号)
「脱炭素社会」へ舵取
小松マテーレ代表取締役会長
中山 賢一 さん
大手化学素材メーカー、小松マテーレ(能美市)の中山賢一代表取締役会長(79)=小松市在住=は、昨年3月、コロナ禍により2週間事業停止の窮地から反転、抗ウイルス素材「エアロテクノ」のマスクや間仕切りなどを市場投入、マスクで年間約100万枚、10億円売り上げた。技術開発型の成果に自信を深め、新年に入り「脱炭素社会」に向け、新たに次世代モビリティの研究開発に参画することを表明した。
「コロナで国内全グループ社員約1千300人を自宅待機させた。約20億円の売上高と6億円超の営業利益を失った。マスクは東芝マテリアル様の技術協力により開発した光触媒加工技術を活用した。国連のSDGs推進に沿った技術研究の成果」と胸を張る。加えてマスクの販売は初の「BtoC(企業と消費者間の取引)」となり、旧社名「小松精練」を現社名に変えたことに続く革新といえる。
小松高(12回卒)、1964年に同志社大経済学部卒後、染色加工の小松精練(当時)に入社、石油危機を契機に大手メーカーの下請けから「自販事業」に乗り出すことを上司に直訴、販売部長などを経て83年に取締役、常務を経て87年に社長、2003年に会長、19年9月から昨年6月まで社長を兼務した。
「環境・エコ」への取り組みは、国立競技場に緑化基盤材「グリーンビズ」が使われていることに象徴される。次世代モビリティでは、炭素繊維などを使うことを提案。「モノづくりは夢みたいなことが現実になるから楽しい」と語る。趣味は読書。「織田信長などの戦国時代ものや山崎豊子の小説が経営の参考になる」と、戦国武将の気構えだ。