話題の人(令和4年1月号)
業界再編乗り切り「脱炭素」へ
石油連盟会長・ENEOSホールディングス代表取締役会長
杉森 務 氏
石油業界最大手、ENEOSホールディングス㈱(東京)の杉森務代表取締役会長・グループCEO(66)は、石油連盟会長として産油国の減産や新型コロナの感染拡大に伴う国内外の経済動向をにらみながら石油の安定供給へ難しい舵取りを担う。同時に世界的な「脱炭素」の流れに対応し、次世代型エネルギー事業にも前向きに取り組む。
七尾市に生まれ、父親が石川県警の警察官だった関係で金沢市など県内各地に住み、泉丘高(26期卒)から一橋大商学部に進み、1979年に日本石油に入社した。本社人事課などで計10年間人事を経験、「名前と顔、性格を覚えるため3千人超の社員と飲み会を重ねた」と語る。
2度のオイルショックなどで、石油業界の合併再編が相次ぎ、1999年から三菱石油と統合後の日石三菱で販売部販売総括グループマネージャーを務め、「ゴルフ、釣り、麻雀などを通じて新たに加わった特約店と関係を築いた」とも。
「入社して社名が6回も変わった」特異な経歴を持つ。2014年に日鉱日石エネルギー、16年にJXエネルギー、17年にJXTGエネルギーの社長を経て20年から現職。「歴史、社風が違う会社の合併は思った以上の軋轢があり、まとめていく苦労を重ねた」と明かす。その中で、誠意を持って話し合う処世訓を得る。「至誠通天」が座右の銘である。
JXエネルギーと東燃ゼネラルとの合併の折は社長として「年間1千億円のシナジー効果を出す」と発表して実現させるなど、経営手腕は高く評価されている。18年に経団連副会長、20年に石油連盟会長に就任。日本のエネルギー産業を牽引する人付き合いの良い経済人だ。