第11代大樋長左衛門 氏

米の大地にインスパイア

恩賜賞・日本芸術院賞受賞工芸家

第11代大樋長左衛門 氏

 今年3月、日本芸術院賞を受け、さらにその中から選抜される恩賜賞を射止めた第11代大樋長左衛門氏(64)=金沢市橋場町=は、シンガポールの銀行ロビーのインテリアを長男で建築家・陶芸家の大樋祐希氏(34)=5月27日挙式=と9月完成へ一緒に手掛けており、陶芸の枠を超えた建築空間づくりなど新たな可能性にチャレンジしている。

芸術院賞受賞作は、約7年前に訪れた米コロラド州のメサヴェルデ峡谷に着想を得た。「メサヴェルデの断崖絶壁の窪みにインディアンの居住地が見つかっており、現地に立つと800年以上も前に生きた先住民の声が聞こえてくるようで魂が震えた。僕の妹、母親、娘が相次いで亡くなり、人の命は何なのかと思うようになった頃で、悲しみを乗り越えるアートのインスピレーションになった」と打ち明ける。

この峡谷にインスパイアされて作風が変わったといわれ、第8回日展の文部科学大臣賞受賞作「神の断崖2021」=写真=にさらに創意を加えたのが、日本芸術院賞の「モニュメント・クリフ」である。

文化勲章受章者である大樋陶冶斎氏(95)の長男。玉川大3年のときロサンゼルスで陶芸家リチャード・ハーシュの「アメリカン・ラク」に感化され、家業を継ぐことを決意。1984年にボストン大大学院を修了後、金沢の祖父の窯で制作に励み、2009年に日展会員賞、16年に11代大樋長左衛門を襲名した。

「伝統の大樋焼を大切にしながら海外で積極的に工芸の魅力を伝えたい」と、欧米、アジアの各地で現地の土を使った公開制作を重ねる。「冒険の遺伝子がある」と自負し、インテリアデザインにも意欲的だ。

加能人 令和5年6月号

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