ボサノバ、サンバの真髄伝える
ブラジル音楽家・能美市観光大使 加々美 淳 氏
1981年からブラジルでギター、ボサノバ、サンバの演奏活動を続け、帰国後、坂本龍一、小室哲哉らのレコーディングに招かれ、「メルシャンワイン」「リプトンティー」など数多くのCM音楽を制作した加々美淳(67)=東京都世田谷区=はブラジル音楽の国内第一人者である。
昭和32年4月、現・能美市(旧寺井町粟生)の生まれ。父親は開業医で、長男だったことから、医者を目指して金大附属中学、高校(27回生)へと進学したが、70年代に活躍し「冬が来る前に」などをヒットさせたフォークグループ「赤い鳥」「紙風船」の後藤悦治郎に私淑、直接触れ合い、音楽活動にのめりこむ。
米バークリー音楽大、ロンドン王立音楽大に留学の後、リオ・デ・ジャネイロ、サンパウロを中心に現地の大学に籍をおきながら、主にギターで演奏、アントニオ・カルロス・ジョビンら著名音楽家と交流した。
音楽家への道、海外での活動を推奨したのが、特撮テレビドラマ「ウルトラマン」などを手掛けた脚本家佐々木守(1936〜2006年2月)だった。佐々木守と加々美の母が〝はとこ〟にあたり、「幼少の頃からよく、実家に出入りしていて、米国留学も彼が勧めてくれた」と述懐する。
2019年から、駐日ブラジル大使館の依頼でソロコンサートを開始、郷里ではFM石川で番組を持ったこともあり、能美市観光大使として昨年9月、同市で同郷の俳優・吉野悠我らとイベントに出演、ブラジル音楽が郷愁を誘った。4月20日には白山市の聖興寺本堂で「ファド」ギター奏者・高柳卓也と演奏会を開く。熱狂的なブラジル音楽とは異質の雪国が育む音楽空間。橋渡しする伝道師のようだ。 (文中敬称略)
加能人 令和7年2月号