九谷色絵で日本の風土表現
日本芸術院賞受賞・陶芸家 山岸 大成 氏
日展特別会員で石川県美術文化協会副理事長の陶芸家、山岸大成氏(68)=能美市寺井町=は令和5年度・第80回日本芸術院賞を受賞し、「長年にわたりテーマにしてきた日本の風土と人々の心の奥底に流れる精神性に思いを巡らす作品づくり」に傾注している。ふるさと石川が未曽有の地震や豪雨被害に見舞われただけに一層、その深い精神性を表現する創作意欲にかられているようだ。
今号表紙絵の「神々の座 綿津見(わたつみ)」は海の神様に対する怖れ、あがめ、祈る場所を波の形にした」と説き、同じく「松韻」は新年の祈りの場、路傍の石にも神様が宿るとする日本人の精神性を表現したという。
九谷焼の産地である現・能美市で明治初年より続く工芸一家に生まれた。父の山岸政明氏と長男の青矢氏は陶芸家。妻の乃布枝さんはつづれ織り、長女の紗綾さんは漆芸家であり、父を除き4人は金沢美大卒業生。2023年春に都内の平成記念美術館ギャラリーで「山岸家5人展」を開催したこともあり、東京でデザイナーの二男・舜氏を含め現代では希少な芸術ファミリーだ。
大成氏は大聖寺高から1978年金沢美大産業工芸デザイン学科卒業、同年日展に初入選、2007年に日展評議員、12年に現代工芸美術家協会理事、現代美術展運営委員長、19年に日展特別会員。地元・九谷焼産地の復興に汗をかき、古九谷発祥地論争にも一過言を持つ。
「坦々蕩々(たんたんとうとう)」を座右の銘に情熱を内に秘めながらも「苦しい時も悲しい時も泰然自若、ゆったりとした人間でありたい」と心がける。その精神性が作品に現れているようで、さらなる深化が期待される。
令和7年新年号