「加賀縫(ぬい)」を伝承、装飾品に
刺しゅう作家 横山幸希 さん
金銀の絹糸を織り交ぜて花鳥風月の模様をつくる国指定伝統的工芸品「加賀繡」。刺しゅう作家、横山幸希(ゆき)さん(25)は、加賀繡の伝統工芸士である母・佐知子さん(56)が営む「加賀繡IMAI」(金沢市三口新町)で、100年続く加賀繍の伝統的技術を継承するとともに「身近なジュエリー(装飾品)としてもっと美術的価値を高めていきたい」と刺しゅう作家活動に意欲を燃やす。
「小さい頃から曾祖母(今井福枝)や母親と一緒に加賀繡に親しんできましたが、作家になるとは思ってなく、大学進学の折は経営面から加賀繡を支えたい」と考え、中央大商学部へ。就職先を探す時期になって「やっぱり自分で作りたい」と心境が変化し、東京の杉野服飾大大学院に進み、ジュエリーを学んだ。
今年4月まで東京の繊維商社に勤めていたが、本格的に作家活動に入るため金沢に帰り、加賀繡を制作。2024年4月、東京都美術館で開かれた第62回日本現代工芸美術展・一般の部に初出品、現代工芸賞を受賞した。
受賞作「五候」は、日本の72ある日本の季節感5つを表現、四角や三角の立体の中に加賀繡の技法を用いて濃淡の異なる赤色で抽象的な模様を描いた。「具象的な模様でなくても加賀繡が美しくみせられる」ことが自信になったよう。
父親はスポーツ好きの整形外科医。幸希さんは中学生から陸上競技を始め、金沢高時代に円盤投げで国体出場経験を持つ異色のアーティスト。自らの名を付けたアクセサリーブランド「YOYUKI」も展開しており、伝統工芸の世界に新風を吹き込む格好だ。
加能人 令和7年5月号