被災研修生の育成に尽力
重要無形文化財「髹漆」保持者
石川県立輪島漆芸技術研修所長
小森 邦衞氏
重要無形文化財「髹漆(きゅうしつ)」保持者で県立輪島漆芸技術研修所(輪島市)の小森邦衞所長(80)=本名・邦博、同市山岸町=は、令和6年能登半島地震や豪雨災害で被災した研修生の指導育成に汗をかく。一方、輪島塗技術保存会の会長時代に5年がかりで制作した大型地球儀「夜の地球」を今年4月に開幕した大阪・関西万博の会場に専門の館を設けて展示することに尽力した。
輪島漆芸技術研修所は、重要無形文化財保持者の技術伝承者を養成する機関で文化庁の予算も入っており、輪島塗だけにとどまらない。現在、研修生34人のうち県内出身者は4人で、9割は石川県外から来ている。このため、被災研修生の避難所確保や卒業制作の教室や展覧場を設けるため金沢美大やその他の機関に交渉し、昨年10月、9カ月ぶりに授業を再開、金沢のしいのき迎賓館で14人の卒業生を送り出した時は「感無量だった」という。
自身も同研修所の出身者で、輪島の中学を出て家具職人を経て同研修所に入った。「松田権六さんら人間国宝に直接指導を受けた。インスピレーションを受けたものをいかに表現したらいいか、図案日誌を書く指導を受けたことが役立っている」と明かす。俳句をたしなみ、「作品づくりに季語をどうやって表現するかに通じるものがある」とも。
2020年に同研修所長と県輪島漆芸美術館館長に就任。輪島塗の大型地球儀は日本万博協会の十倉雅和会長から「すごい技術に心を打たれた」として展示を請われて実現したが、「復興の核になるのは世界に通じる輪島塗、それをつくる作家たち」と、人材育成を肝に銘じて止まない。
加能人 令和7年7月号