英国人漆芸家  スザーン・ロス さん

被災にめげず漆文化伝える

金沢在住の英国人漆芸家

スザーン・ロス さん

 

 県立輪島漆芸技術研修所専修科を卒業し、輪島市西脇町の山間地で漆芸家として暮らしていた英国人のスザーン・ロスさん(64)は、24年元日の能登半島地震で自宅や工房が被災し、富山県南砺市などで避難生活を送り、同年11月から金沢市湯涌温泉の空き家を工房に活動を再開。「日本の美しい文化、漆の魅力を世界に伝えたい」と、病気を抱えながら孤軍奮闘している。

 ロンドン生まれで、アートスクールに進学した折、英国王立芸術院で「つやつやと光る黒地に金と貝がキラキラ光る尾形光琳作の漆塗り硯箱にすっかり魅せられて」22歳のとき、片道切符で訪日した。漆の勉強に入る前に、墨絵、書道、生け花、着付け、印鑑作りを習得。1990年、大和日英基金の奨学金を受け、輪島に転居。県立輪島漆芸技術研修所で重要無形文化財「髹漆」保持者の小森邦衛所長らの指導を受けた。

 輪島塗は木地、下地、塗り、加飾など少なくとも6工程が分業制となっているが、ロスさんは大半を独りでこなす。このため、輪島塗の業界では、ニューヨークやハワイなどで講演し、輪島塗を世界に広める功労を認めながらもよそ者扱いにされがち。本人も「輪島塗は世界一だが、漆は輪島塗だけではない。私は縄文時代からある漆の美しい日本文化を広めたい」と初心を貫く。

 夫のクライヴさんは石川航空学園の英語教師で、被災後、東京・青梅キャンパス勤務。東京、台湾に2人の娘がいるが、当面は愛犬をそばに湯涌の自然をめでながら漆芸作品の制作に精魂を傾ける。

加能人 令和8年8月号


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