話題の人(令和3年4月号)
友禅ドレスで邦楽コラボ
ハープ奏者 上田 智子さん
パリ・エコール・ノルマル音楽院を首席で卒業し、クラシック音楽で実績を積んだハープ奏者の上田智子さん(48)=津幡町在住=は、5年前に加賀友禅特使に委嘱されたのをきっかけに金沢市内の筝曲家北村雅恋さんと横笛の藤舎眞衣さんの同特使3人ユニット「KOTOHA」を結成するなど邦楽とのコラボレーションに意欲をみせている。
上田さんは金沢市生まれ。母親の吉村俊子さんが同市東山でピアノ教室を開いていた関係で、ピアノのほか、6歳よりアイリッシュハープ、10歳よりグランドハープを習い、金沢辰巳丘高芸術コース(ピアノ科)を卒業。東京音大器楽科ハープ専攻、同研究科を修了後、パリに留学した。
パリに4年半いた間に、第6回ヨーロッパ国際音楽コンクールハープ上級部門で第1位になるなど高く評価された。28歳で一時帰国中に父親が脳溢血で倒れ、「失意の時、友人に誘われて乗った七尾湾の船で夫と出会ったが、母が看病疲れか亡くなったため完全に帰国した」と吐露する。
世界最高峰のフィルハーモニア・カルテットベルリンと共演するなど実力は折り紙付き。05年に石川初のハープアンサンブル「エトワール」を結成し、自ら編曲・作曲も。東日本大震災の被災地など全国各地へ演奏にでかけるが、コロナ禍で中止や延期になるケースも多い。
「ハープの魅力をより広めたい」と、古典から「ひき潮」などポピュラーな曲までレパートリーは幅広い。4月2日、金沢港クルーズターミナルで行われた「飛鳥Ⅱ寄港歓迎式」では「KOTOHA」の邦楽トリオに合わせ、加賀友禅の羽織ドレス姿で演奏=写真=。「金沢文化」の発信にも一役買うハーピストだ。