美川漁港で漁師に挑戦
書家・水墨画家
幸才 多聞 さん
書家、水墨画家の幸才多聞(こうさい・たもん)さん(46)=本名・真澄、白山市道法寺町=は、趣味の海釣りが嵩じて漁船を購入、JFいしかわ美川支部の組合員になり、今春から美川漁港を拠点に漁を始めた。「船漁はいつ座礁したり、海に投げ出されるか分からない緊張感がある。命をさらした作品を書きたかったので良い刺激になっている」と、墨の芸術家と漁師の二刀流を満喫している。
石川県水墨画協会の会員で、虎や龍など力強い作品が特徴。自宅で書道教室を開き、福祉施設などへ出張指導しており、約80人の生徒を抱える人気女流書家だ。夫はガス、ガソリン、金物店を経営する実業家で、京都にいる女子大生と男子高校生の2人の母親であり、主婦業もこなしながらアーティスト活動に励む。
金沢市久安で小学校1年生のとき、近所の習字教室に通ったが、中学、星稜高時代は剣道部に所属した体育会系女子だった。星稜短大卒業後、自動車ディーラーに就職、21歳のとき、ミス野々市じょんからに選ばれた。結婚して旧鶴来町に住み、「子ども達の書道教室に同伴するうち、書の魅力にとりつかれた」と語る。
海漁は2年前に美川漁港で漁師をする長田真典さん(44)と知り合い弟子入り。長田さんが新船購入に伴い、小型船舶操縦の免許を取得し、小型漁船「獅丸」を引き継いだ。捕獲したアカイカなどの魚は南加賀公設地方卸売市場などへ持ち込む。
本業の書家としては、金劔宮のほうらい祭りに青年団から依頼を受け、山車の上り旗に「日本一」「鬼退治」と力強くしたためた。「書きぶりではなく、何を書くかが大事」と、言語アーティストを目指す気構えだ。
加能人 令和5年11月号