「音楽は心のレストラン」
芸術選奨文部大臣賞受賞
OEKアーティスティック・リーダー
広上淳一 氏
オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のアーティスティック・リーダーである広上淳一氏(66)は今年3月3日、文化庁が発表した2024年度芸術選奨の文部大臣賞を受賞した。能登半島地震により昨年2月から金沢市内の2次避難所を皮切りに能登の避難所や病院、小学校、道の駅などにOEKでは80回超、自らも10数回足を運び、鍵盤ハーモニカを吹く出前演奏を繰り広げたことなどが評価された。
1983年に東京音大を卒後、84年アムステルダムで開催されたキリル・コンドラシン指揮者コンクールで優勝、ノールショピング交響楽団(スウェーデン)、コロンバス交響楽団(アメリカ)、京都市交響楽団等での音楽監督職を歴任、マエストロと呼ばれる国内外で評価の高い名指揮者。今年元日に輪島市で営まれた犠牲者追悼式では献奏のタクトを振ったが、出前演奏ではクラシック音楽の堅苦しさは感じさせず、親しみやすいパフォーマンスで被災者の心に寄り添う。
「2年半前(2022年9月)に金沢に来たときに考えていた5年計画は震災と豪雨でそれどころではなくなった。被災者にクラシック音楽を聴いてもらう余裕はなく、こちらから出かけるのが最良だと判断した」と語る。「音楽は心のレストラン。少しでも人々の心が癒やされれば」と、ガルガンチュア音楽祭などのほか、団員を身近に知ってもらうため金沢市内の居酒屋などでも演奏し、ファン層拡大に汗をかく。
東京生まれだが、祖父母、両親とも富山市出身で、「北陸には馴染みがあり、金沢は人生最終章の場所」ときっぱり。「謙虚、向学」を座右の銘に、力強くタクトを振る。