話題の人

石川県の〝文化大使〟担う

茶道家・裏千家今日庵業躰 奈良 宗久 氏

 金沢市大手町の茶道教場「好古庵(こうこあん)」を主宰し、一般財団法人裏千家今日庵(京都市)の業躰(ぎょうてい・正教授方)である奈良宗久(そうきゅう)氏(57)は、令和5年の石川県国民文化祭で天皇・皇后両陛下隣席の開幕式でお点前を披露するなど石川県を代表する茶道家である。国内外の茶道の普及に務めており、今夏の全国学生大茶会でも指導にあたり、陶芸、生け花、書などと合わせ石川の伝統文化を国内外に発信する〝文化大使〟を担う。

 文化勲章受章の陶芸家・大樋陶冶斎氏(故人)の二男で、高校から玉川学園(東京)に進学、玉川大文学部芸術学科在学時から父に師事し、美術工芸作家活動を始めた。日展、日本現代工芸展に入選し、今も美術工芸作家として活動しており、ドイツ国立アジア美術館などに収蔵作品がある。茶道家を志したのは、大樋家と交流があった草月流前家元の勅使河原宏氏(故人)との出会いからだった。

 「大学3年の時、勅使河原氏が監督した映画『利休』を観て、戦国時代の武将にとって茶室は一時の平和な空間を共有する場、男の美学があることに気づいた。勅使河原氏から私の日展初入選作を観て、この壺に生けたいので譲ってほしいと言われた縁もあった」と述懐する。

 全寮制の裏千家学園茶道専門学校を経て、家元の茶室・教場である「今日庵」に内弟子として入り、平成29年に正教授方拝命。金沢市文化活動賞、石川県文化奨励賞など受賞。今年6月、東京国立博物館内茶室で「百万石加賀前田家茶会」を主宰したが、活動ぶりが今春から日本文化・美術の専門誌『和樂』でも連載中。同氏にとって禅の精神を取り入れた佗茶が根幹にあり、利休の教え「和敬清寂」を金沢の伝統文化とともに伝えたい意向だ。

 加能人令和8年10月号

人間との「猫社会学」研究

東京大学大学院人文社会系研究科・文学部社会研究室教授

赤川 学 氏

 

 人間と猫の関係を学問的に解き明かす新分野の「猫社会学」を提唱する東大大学院人文社会系研究科の赤川学教授(51)=志賀町出身=は、さる7月12日、羽咋市で開かれた母校・羽咋高の同窓会総会で、「猫社会学、はじめました」と題して記念講演した。

 2021年頃から始めた「猫社会学」について講演の中で「単に猫のかわいさを研究する学問ではない。〝猫と人間の関係〟を見つめることで、家族とは何か、愛情とは何か、人間はほかの生き物とどう共存するのかを問うことで人間社会そのものが見えてくる」と力説した。

 羽咋高卒業後、東大文科3類に進学し文学部へ。当時は「東大に入ったからには末は博士か大臣か」と本気で考えていたという。「政治家は難しそう。それなら博士になろう」。そんな発想から文学部へ進み、社会学と出会った。20代でセクシュアリティの歴史社会学、30代以降は少子化や人口減少問題を研究。50代に入り、「これから先の人生を考え、本当に好きなことを研究したい」という思いにかられる。その先にいたのが、好きな猫だった。

 子どもの頃から実家に猫がいて、大学院生時代に再び猫を飼ったが、2011年に愛猫を亡くし大きな喪失感に襲われる。5年ほど経つと「あの柔らかさ」が恋しくなり、現在は3匹と暮らす。

 猫の魅力を読み解くために文化人類学者・川喜田二郎氏が考案した「KJ法」を基礎とする分析手法を用いた。『猫社会学、はじめます』(筑摩書房刊)などの著書があり、いつも猫好きの人たちに「猫は、あなたにとってどんな存在ですか」と問うユニークな愛猫家の研究者だ。

加能人 令和8年9月号

被災にめげず漆文化伝える

金沢在住の英国人漆芸家

スザーン・ロス さん

 

 県立輪島漆芸技術研修所専修科を卒業し、輪島市西脇町の山間地で漆芸家として暮らしていた英国人のスザーン・ロスさん(64)は、24年元日の能登半島地震で自宅や工房が被災し、富山県南砺市などで避難生活を送り、同年11月から金沢市湯涌温泉の空き家を工房に活動を再開。「日本の美しい文化、漆の魅力を世界に伝えたい」と、病気を抱えながら孤軍奮闘している。

 ロンドン生まれで、アートスクールに進学した折、英国王立芸術院で「つやつやと光る黒地に金と貝がキラキラ光る尾形光琳作の漆塗り硯箱にすっかり魅せられて」22歳のとき、片道切符で訪日した。漆の勉強に入る前に、墨絵、書道、生け花、着付け、印鑑作りを習得。1990年、大和日英基金の奨学金を受け、輪島に転居。県立輪島漆芸技術研修所で重要無形文化財「髹漆」保持者の小森邦衛所長らの指導を受けた。

 輪島塗は木地、下地、塗り、加飾など少なくとも6工程が分業制となっているが、ロスさんは大半を独りでこなす。このため、輪島塗の業界では、ニューヨークやハワイなどで講演し、輪島塗を世界に広める功労を認めながらもよそ者扱いにされがち。本人も「輪島塗は世界一だが、漆は輪島塗だけではない。私は縄文時代からある漆の美しい日本文化を広めたい」と初心を貫く。

 夫のクライヴさんは石川航空学園の英語教師で、被災後、東京・青梅キャンパス勤務。東京、台湾に2人の娘がいるが、当面は愛犬をそばに湯涌の自然をめでながら漆芸作品の制作に精魂を傾ける。

加能人 令和8年8月号

移動知事室で県民の声

石川県知事 山野 之義 氏

 今年3月8日、現職の馳浩氏を相手に4年前の雪辱を果たした山野之義石川県知事(64)=前金沢市長=は6月定例議会に臨み、信条とする「現場主義」で県政を運営し、「いしかわ移動知事室」により能登や南加賀の声を反映させる決意を表明した。

 過去の公選石川県知事で初の金沢市出身者であり、知事選で〝金沢票〟が勝敗を分けたとされる。それだけに能登や南加賀へ気を配る。とりわけ県政最大の課題である能登半島地震・奥能登豪雨の復旧復興へ「基本的に創造的復興プランを踏襲しないといけないと思う」と語る。

 初の県議会で「新鮮味がない」との声も聞かれたが、兼六園の入園料を県民と観光客で分ける「二重価格」導入の考えや国登録無形文化財となった「加賀料理」の継承・発展に向け今秋、県民に向けた「行動宣言」を発表する予定。また、奥能登地域の県立高5校を対象に、能登空港に共同学習施設「奥能登未来創造センター(仮称)」を整備する方針も示す。

 もっとも、奥能登の公立4病院を統合する新病院について、分娩機能を設けてほしいとの要望に「産科に焦点を絞った分科会で議論を進め、妊婦の安全を第一に考えていく」と慎重姿勢。7月23日を皮切りに4日間、奥能登で開く「移動知事室」で改めて住民の意見を聴く。

 泉丘高(32期)、慶大文学部仏文科卒。ソフトバンクの東京勤務を経て帰郷。1995年から金沢市議4期、2010年から3期、22年まで金沢市長歴任。尊敬する政治家に元金沢市長の故・山出保氏を挙げ、座右の銘は「意志あれば道あり」。

 選挙戦で「まっすぐ県民目線」を唱えた姿勢そのままにフットワークの良さで県政を推進する。

加能人 令和8年7月号

網膜疾患のiPS治療研究

(株)VC Cell Therapy 取締役CTO 堀 清次 氏

 病気やケガで失われた機能をiPS細胞(人工多能性幹細胞)により再生させる治療は2012年に山中伸弥京大教授がノーベル医学・生理学賞を受賞して注目され、今年2品目が世界で初めて日本で承認された。その一翼を担う㈱VC Cell Therapy(以下・VCCTに略、神戸市)の取締役CTO(最高技術責任者)である七尾市出身の堀清次氏(63)=医学博士、豊中市在住=が5月17日、大阪市内のホテルで開かれた母校・七尾高校の関西同窓会で「iPS細胞治療、開発の現状と展望」の演題で講演し最先端医療の研究開発に理解を求めた。

 VCCTは国立研究開発法人・理化学研究所で網膜再生医療の先駆者だった髙橋政代博士が創設した「理研ベンチャー」で、神戸アイセンター(神戸市)を拠点にⅰPS細胞による網膜疾患治療に取り組む。2014年に設立された㈱ⅰPSポータル(京都市)の執行役員社長室長と生殖補助医療における細胞治療を担う㈱「ほうじょう」の取締役も兼務する。

 旧中島町出身で「少年時代は昆虫が好きで小学5年生でアマチュア無線の資格をとり、将来は科学者になりたかった」と振り返るが、七尾高生(33期)の時はサッカー部に所属し、文武両道。京大理学部に進学、京大大学院理学研究科修了。ノバルティスファーマ、京大講師などを経てスタートアップに転身した。

 「現在の細胞治療は抗体医薬の20年遅れの状況。アムシェブリ、リハートの2件が条件期限付きで承認されたが、まだ正式に認可されたものはない。今年はⅰPS細胞治療市場投入元年」と解説し、難病患者救済を図る自らのベンチャービジネスに意欲をみせる。

加能人 令和8年6月号

スウィングする気持ち大切に

ジャズシンガー・歯科医

山田 ゆき さん

 

母親、歯科医、ジャズ歌手の三足のわらじを履く山田ゆきさん(45)=川崎市在住=は、津幡町、金大医学部出身で産婦人科医だった父・靖幸氏(故人)と金沢市、金大薬学部出身で薬剤師の母・啓子さん(76)=名古屋市=が両親の石川ゆかりの人。2025かわさきジャズBRIGEアーティストに選ばれるなど、東京・神奈川、名古屋、金沢とゆかりの地でライブ活動を続ける。

生まれは父親が勤務していた米国コネチカット州。幼稚園児まで津幡町で小学生から名古屋暮らし。ジャズを聴き始めたのは母親の影響から。中学生の時、女子合唱部でアルトのパートだったが、低い声を生かしジャズシンガーになった。

鶴見大(横浜市)歯学部を卒業、歯科医をしながら代々木NARU(東京)のオーディションに合格しジャズボーカリストとして本格的に活動を始めた。

広島県出身の男性歯科医と結婚、2児(現在中3と小6)の子育てをしながら、椎名豊ら多くのジャズミュージシャンと共演。アルバム「フィーリング グッド」など3枚リリース。昨秋、川崎の工場夜景を見ながらのクルージング演奏会はNHK横浜放送局から全国生中継された。

「ジャズは会話、即興のスキャットは自分の日々育んだ感性から出ます。子育ても生かされています。心が躍るスウィングするのがジャズの醍醐味です」と吐露、CDに入れるライナーノーツも書き、今春、自ら作曲も。歯科医として高齢者施設への訪問治療も続けるが、「私は忙しい両親の背中を見て育った。ジャズ歌手としてお客さんと一緒にみんなをつなぎたい」と語る骨太、パワフルなジャズシンガーだ。

加能人令和8年5月号

内なる感性を即興ライブ

キーボーディスト・音楽プロデューサー

佐野 観(Kan Sano)さん

 

 今年1月30日夜、金沢21世紀美術館内にあるシアター21で佐野観(KanSano)さん(42)=東京=は150人ほど入った観客席と同じフロアに置かれたグランドピアノにスポーツシューズを履いて向かい、即興演奏を繰り広げた=写真=。

「劇映画 孤独のグルメ」の主役松重豊さんから頼まれて提供した同映画のエンディングテーマなどジャズとクラシックを融合した独自スタイルの曲作りと演奏が人気を集めている。

父親が兵庫県で音楽関係の仕事をしていて宝塚市で育ったが、阪神淡路大震災に遭い、かほく市に母親の実家があった縁で11歳の時に金沢市に転校、犀星中から桜丘高に進学。「吹奏楽部でトランペットを吹き、バンドもやっていたが、ジャズに興味を持ち始め、金沢市芸術村のジャズワークショップに通ううち本格的にジャズを勉強したくなって渡米した」と語る。

留学先は米ボストンにある現代音楽・ジャズの最高峰・バークリー音楽大学。桜丘高吹奏楽部2年先輩が留学していたことも背中を押した。

同大ピアノ専攻ジャズ作曲科を卒業し英デッカレコードから日本人として初リリースした。

能登半島地震発生時は金沢に帰省中で、数日後、被災地支援へ金沢市内の古書店でインスタライブを実施。桜丘高54期生として昨年10月、「三桜同窓会設立100周年記念のつどい」(金沢)にゲスト出演した。4月にアルバム「MOJACAT」を発売、5月から全国ツアーに乗り出す。最終日の6月25日に金沢公演を予定しており、「金沢の音楽シーンに何か役立つ活動をして恩返ししたい」とふるさと貢献にも意欲的だ。

加能人令和8年4月号

「一生、放送人でいたい」

ラジオパーソナリティ  能美市観光大使

小林 奈々絵 さん

 

 文化放送(東京)のラジオ長寿番組「走れ!歌謡曲」のパーソナリティを10年近く担当し、現在も同局の「大人の歌謡クラブ」などに出演するフリーアナ小林奈々絵さん(42)=東京、能美市大長野町出身=は、昨年12月、同市誕生20周年記念イベントで総合司会を務めるなど、ふるさとの魅力発信に一役買っている。

「小学生の頃、国語の教科書の朗読をほめられ、校内放送の委員にもなって楽しかった」という思い出が、持ち前の美声を生かす進路選択に。小松明峰高卒業後、通信制の自由が丘産能短大(東京)に3年通って卒業。日本コロムビアに入社、受付嬢をしていたが、デモテープ作りで、八代亜紀の代役として仮歌を歌う機会があり、「ヘッドフォンをつけて歌ううち、小さい頃にこんなシーンに憧れていた」ことにフラッシュバックし声優養成所に通った。

2009年12月、文化放送の「走れ!歌謡曲」のオーディションに800人超の中で合格。当時、25歳、その後、深夜2時間の生放送をこなし、中高年のドライバーらを中心に「夜明けのプリティーウーマン」の愛称で人気を集めた。全日空の機内オーディオ番組も担当し、ナレーションには定評がある。

両親が寺井町でステーキ店を営んでおり、調理師免許を持ち、フードアナリストやビールマイスターの資格も。2013年度「食のなでしこコンテスト」でグランプリを受賞。

共作のCD「金沢・愛のパラミシア」「夜明けのリクエスト」も出す。5年前に出産を明らかにし、公式ブログのタイトルは「ななころび八起き日記」。「生放送は人と人の出会いがあり、楽しい。一生、放送人でいたい」と、語る声は明るい。

加能人 令和8年3月号

産休制度の改善に尽力

初の女性石川県議会議長 安居知世 氏

 昨年3月、石川県議会で初の女性議長(第107代)に就任した安居知世氏(57)=自民党、金沢市=は「県議活動の一丁目一番」に据える少子高齢化対策や女性の地位向上の一環で21年3月に議員の産休制度を設け、24年12月には産前を6週から8週に増やす制度改革を実現した。

県議会の女性議長は全国で6人目だが、石川県議会は副議長も八田知子氏(自民党、小松市)が同時に選任され、正副揃っての女性は全国初。

全国議長会の男女共同参画委員長の立場を生かし議長会に働きかけ全国の議会の産休延長につながる標準都道府県議会会議規則を改定し「全国の自治体や一般企業の育児休業の拡大につながれば」と願う。

金沢に勤務する外科医と結婚し、「一子を授かったが、年齢的に二人目を作れなかった後悔もあって、子育て環境の改善を政治課題に据えた」と打ち明ける。

1987年に星稜高から金沢女子大(現・金沢学院大)に進学、3年次にニューヨークの大学語学専門学校に9カ月間留学、祖国を捨てる覚悟で留学している海外の学生と交流する中、「自分がいかに世界を知らなかったか、思い知らされた」とカルチャーショックを受ける。

他国の文化に出会える仕事に就きたいと1992年に日本航空に入社、国際線客室乗務員(CA)を11年勤めた。世界を飛び回る中、「日本の良さをもっと日本人に伝えたい」と思うようになり、働きながら子育てする中で地元の政治に関心を高め、2003年に金沢市議に初当選した。

11年に県議に初当選、副議長、少子高齢化対策特別委員長等を経て4期目で現職。高市早苗首相を筆頭に「ガラスの天井を破る女性政治家」が増える中、「感謝」の気持ちを忘れずパワー全開といったところだ。

加能人 令和8年2月号

新ビジネスモデル推進

㈱CCIグループ代表取締役社長 杖村修司 氏

 

 北國銀行の持ち株会社であるCCIグループ(金沢市)の杖村修司社長(64)は25年10月1日、社名を北國フィナンシャルホールディングス(FHD)からコミュニケーション(対話)、コラボレーション(協働)、イノベーション(価値創造)の頭文字を取って現社名に変更した。

「地域の課題解決や価値創造に関わるパートナーと共に、未来を自ら構想、挑戦、創造していく決意が込められている」との説明は、バンカーより起業家のようだ。2020年に北國銀行頭取、21年10月から現職に就く。北國銀行をはじめコンサルや投資、システム開発・販売など13社を傘下に持ち、伝統的な銀行業務にとどまらず、顧客の多様なニーズに応える「新しいビジネスモデル」の推進に意欲をみせる。

小松市生まれ、金大附属中・高校から1985年に慶大商学部卒後、北國銀行に入行。デジタル・ⅠTに強く、企画部長など歴任。地域通貨サービス「トチツーカ」を導入し、ウェブ通帳などのサービスを組み合わせた「北國ライフタス」の契約口座は累計20万を突破し、地銀DXのトップランナーと呼ばれるまでに。

同行の改革は30歳代でプロジェクトチームのリーダーに抜擢されて以来の取り組みだが、キャッシュレスサービスに苦手な高齢者向けに新サービスを提供する柔軟さも。NY、香港勤務を経験しており、海外4カ国に現地法人を設け、新年4月に海外事業の統括会社を設立する。

座右の銘は、大学生の時、北國銀行東京支店長だった父親と柔道家・嘉納治五郎邸に同居した折、そこに掲げてあった同氏の「精力善用 自他共栄」。自分の経験、能力を最大限に発揮し、地域社会に貢献する気構えだ。

加能人 令和8年新年号

「高齢者音楽デイ」で活動

ソプラノ歌手・介護福祉士 下村裕子さん

 

 ソプラノ歌手下村裕子さん(65)=旧姓・島本、東京都東久留米市在住=は11月3日、かほく市の西田幾多郎記念哲学館で叔母に当たる内灘町出身の洋画家野村康子さん(享年84歳)をしのぶ追悼展覧会と追悼コンサートを企画、ゆかりの音楽家らと「千の風になって」などを合唱した。日頃は介護士の資格を持ち、都内のデイサービス施設「歌のつばさ」で音楽療法に携わり、高齢者の認知症予防・軽減に尽力している。

「たとえ認知症であっても音楽は感情や記憶に働きかけ、過去の楽しい記憶が蘇り、リラックス効果や脳の活性化に大きな役割を果たします。高齢者にとって安心感や生きがいに繋がり、音楽を通して住み慣れた地域で在宅生活が続けられるように努めています」と〝音楽デイ活動〟について語る。

内灘中学、県立金沢向陽高(昭和53年卒)から武蔵野音大声楽科・同大学院修士課程声楽専攻修了。同大福井直秋記念奨学生で、同大卒業演奏会、ノヴァンタ・ノーヴェイタリア声楽曲演奏会などに出演した。大学卒業後は新宿区立中学や私立中学の音楽教師を務め、男児2人の子育てを終えてから、様々な社会活動に参加する。

ふる里愛も強く、内灘町の町制50周年プレイベントの砂丘フェスティバルでは、町民愛唱歌の一部「町歌」を独唱している。スポーツドクターでテノール歌手、北山吉明氏はじめ金沢、内灘町などの歌手、音楽家と交流があり、今回の追悼コンサート実現にこぎつけた。

金沢市声楽コンクール金賞を受賞したソプラノ歌手だが、野村康子追悼コンサートで歌った「この道」に心情を吐露した格好だ。

加能人 令和7年12月号

輪島塗再興へ米国研修

(株)田谷漆器店 代表取締役 田谷 昂大 氏

 

昨年元日の能登半島地震で輪島市杉平町の工房が全壊し、朝市通り近くのギャラリーが焼失した輪島塗の老舗、㈱田谷漆器店の田谷昂大(たかひろ)社長(34)=金沢市在住=は若き漆器プロデューサーとして輪島塗業界の復興に励む。今年9月7日から7泊9日の日程で米国ロサンゼルスへ5人のチームで研修と市場調査に出かけ、「大変面白く、どういうデザインが世界のトレンドか分かった」と、成果の一端を語った。

田谷漆器店の田谷昭宏会長(62)の長男。金沢泉丘高から成城大経済学部に進学、同大卒後、24歳の時、帰郷して家業に就いた。「東京に行って輪島塗の良さが分かった」と吐露する。

輪島塗は124の製造工程に11の職種が分業しており、塗師屋はその総合プロデューサー。伝統を守りながら新しい感覚の経営が求められ、震災前に「㈱The Three Arrows」を設立し、輪島塗を体感できる飲食店・ギャラリーを金沢市木倉町にオープンした。

海外やネット販売も展開、被災後は公的助成やクラウドファンディングを活用、トレーラーハウスなど仮設工房2棟を立ち上げ、職人8人を維持した。大阪・関西万博でも展示販売し、何度も講演し輪島塗をアピールした。

今後の輪島塗業界の復興について「アート作品としての価値を高め、海外に売り込む。これまで県外に販売に出かけていたが、輪島に来てもらって輪島塗を買ってもらえるようにしたい」と抱負をきっぱり。珠洲出身の夫人と子供との3人暮らし。次世代に向けてのプロデュースも怠りない。

加能人 令和7年11月号

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